2015年3月19日木曜日

遺言と遺書の違い

 遺言についていろいろ書いていますが、「遺言」は一般的には「ゆいごん」と読む人のほうが多いのではないでしょうか。
 自分はそもそも遺言というものについて法律を学ぶまでそれほど意識したことはなかったのですが、それまでは「ゆいごん」と読んでいたような気がします。
 民法、家族法を学んで、「いごん」と読むのだと知りました。まぁどちらが正しいとか主張する気はないのですが、今現在、自分の中では「いごん」がスタンダードです。皆さんはいかがでしょうか。
 さて、似た言葉に「遺書」という言葉があります。こちらは「ゆいしょ」ではなく「いしょ」と読むと思います。
 また、「遺言書」という言葉もあります。
 では、これらの言葉はどのように違うのでしょうか、それとも同じなのでしょうか。今回はこれを整理してみたいと思います。
 法律の学術書などを読むと、「遺言」は「自己の死亡とともに身分上あるいは財産上の法的効力を発生させる目的で一定の方式に従って行う、相手方のない単独の意思表示」などと定義されていますが、ここからも分かる通り、遺言とは意思表示の一種になります。
 また、民法などの法律の条文に出てくる、法律上の用語です。
 この遺言を書面に表したものが「遺言書」ということになりますが、法律上は遺言の方に意味があるため、「公正証書遺言」とか「自筆証書遺言」というように、「~という書面に表した遺言」というカタチで登場します。
 これに比べて、「遺書」という言葉は法律の条文には出てきません。一般的には、遺訓や単なる心情、希望を記載したものを指し、法律効果の発生を意図した内容に限らないので、「遺言」を表した「遺言書」よりも大きな意味の概念で捉えられているようです。
 ちなみに、例えば公正証書遺言を作成する際にも、遺訓や単なる心情、希望を記載することは可能ですが、通常は「付言事項」として法律上の意味を成さない事項として最後にまとめて記載することが多いです。
 ただ、法律上の意味はなくても、遺言者や相続人などの当事者にとってはそちらのほうが大切だったり、重要な意味を持っていることも少なくないので、私としてはけして軽い扱いをしないようにしています。
 いずれにしても、故人の思いが遺された方に伝わるようにお手伝いしたいと思います。